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last updated 2021.03.31

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「インポスター症候群」の人がフリーランスに向いてる可能性の話

最終更新日から1年以上過ぎています。
内容が古くなっている可能性もあるのでご注意ください。

今回のテーマはちょっと自己啓発チックです。

本当はこのブログは「技術ブログ」として運営したくて、あまりこういうテーマは取り扱う予定がありませんでした。
でも、今回知った「インポスター症候群」が自分の中でものすごく腑に落ちて、フリーとして生きていくことへのためらいや不安みたいなものがすっと溶けていったので、記録の意味もこめて書き起こしました。
同じ悩みを抱える誰かに、ひとつの選択肢として届けばいいなと思います。

フリーに向いてる/向いてないってこれ以外にもいろんな要素が絡むから、あくまで「ひとつの」選択肢としてね!

インポスター症候群とは

インポスター症候群をひと言で言うと「自分の能力を自分で肯定できない心理傾向」です。「自己肯定感が低い人」の仕事バージョン、みたいな感じでしょうか。

ちなみに「症候群」と名前がついていますが、病気の類ではないらしいです

インポスター症候群の人は、仕事の中で周囲から評価されたり実績を残しても、それをまっすぐ受け止めることができません。
「たいしたことじゃない」「たまたま運がよかったんです」という言葉が、謙遜でもなんでもなくガチで出てきます。
いくら成功体験を積んでも、そこから自信を生み出すことができません。
いつでも「いつかするかもしれない失敗」にびくびくしていて、小さなつまずきでこの世の終わりみたいに落ち込みます。

ちなみに「インポスター」には「偽者」「詐欺師」といった意味があります。
この言葉が示す通り、インポスター症候群の人は自分が「能力があるように周りをだましている」「周囲に相応以上に祭り上げられている、いつか化けの皮が剥がれるのが怖い」といった意識にずっと苛まれているそうです。

某宇宙人狼ゲームで有名になった単語ですね。インポスター

苛まれている「そうです」と表現したのは、私はこの点においてはちょっと違ったからです。
詳しくは後述しますが、私は「自分が周りをだましている」というより、「周りが自分をだましている」と感じていました。
ただ「周囲の高評価や仕事の好結果をまっすぐ受け止められない」という一番大きな特徴が合致していたのと、仕事以外(恋愛や友人関係)でも自己肯定感の低さをたびたび指摘されてきたことから、おそらく私もインポスター症候群なんだ(もしくは「だった」)と思ってます。

私の「インポスター体験」

先にちらっと書いた通り、私はインポスター症候群の代表的な思考回路である「自分が能力があるように周りをだましているんじゃないか」とはちょっと違う考え方をしていました。

書いてて自分で辛いんですが、「周囲はお世辞や社交辞令で褒めてるだけで、本当は私の能力の低さをとっくに見抜いて生暖かい目で見てるんじゃないか」という思考です。

私がインポスター症候群に苦しんでいたのは、新卒入社したウェブ企業でした。
一部上場企業で自社サービスを多く持ち、業界中異例なくらいのホワイト。今思い出しても、私にはもったいないくらいのいい企業です。
私は同期の十数人と同じく「将来の幹部候補」と言われて入社し(新卒プロパーとしてはよくある話)、自社媒体のエディターやディレクターとしてキャリアをスタートしました。

そこで常に脳内を占領していたのは「私なんかに指示を出されているベテランのデザイナーやエンジニアはさぞかし大変で迷惑だろう」という考えでした。

「KUBOのディレクションはすごく動きやすくていいよ」と仮に言ってもらっても「ああ、ずいぶん気を遣わせてしまっているなあ」としか思わず。
上司から「お前の長所は間違いなくそのコミュニケーション力だね」と褒めてもらったとしても「コミュニケーションって多少なりすべての人がやることで、私にはそれしか褒めるとこないんだなあ…」としか思わず。
自分の発案した企画がたまたま好アクセスをたたき出しても「時勢がよかったなあ」とか「まあデザイナーが〇〇さんだったしそのおかげだなあ」としか思わず。
「〇〇部の××さんって、仕事できないよねえ」といった噂話を聞くたびに「あ~私もきっと言われてるんだろうなあ」とばかり思ってました。
というか、今でも会社員時代の思い出を振り返れば同じことを思います。

私自身が、本来の嗜好として、実際に技術や知識を備えて手を動かすデザイナーやエンジニア向きの性格だったことも一因だったんだと思います。
どんなにディレクターとして場を仕切り慣れていっても、現場の知識や技術がいつまで経っても手元に貯まらず(実際は何もしないよりは貯まってるんですが、実務に触れることに比べたらスズメの涙ですよね)、ディレクターとしてのキャリアが重なっていくのに比例して、虚しさや自分の偽者感がどんどん募っていきました。
自分にはなんの能力もないのに、実力のある人たちを口先で振り回して、虎の威を借りてお給料もらってる。そんな気持ちでした。

ちなみに、インポスター症候群とは逆に自分を過大評価する「ダニング=クルーガー効果」なる心理傾向もあるらしくて、「仮にこの褒め言葉を真に受けたら私はダニング=クルーガー」だと毎度思ってました。(当時はこの名前を知らなかったので、言葉通りこう考えたわけではないですが)

1000人超の社員を有するたくさんの人間を見てきた企業で、そんな名前もついてるほどの有名な感情に振り回されてる若造のこと、周囲はとっくに気づいてたと思います。きっといろんな人がいろんな場所でいろんな手を差し伸べてくれていたでしょう。
でも当時の私はそれに気づく余裕もなく、劣等感でぐずぐずになりながら、最後はすべり落ちるように自主退職しました。

ちなみにその時、上司を含めた何人かから引き留めてもらいましたが、やっぱり社交辞令や自分の体面のためだったんだろうなあと今でも思ってます

私がインポスターの呪いから脱出したきっかけ

そんな「評価や結果を自信として吸収できない」私が「吸収できるようになった」きっかけがあります。
それが「フリーランスとして働き始めたこと」だったのです。

フリーランスの一番大きな特徴として「安定感のなさ」が挙げられます。
正社員はおいそれとクビにできませんが、契約社員や派遣社員はいつでも「来月から来なくていいよ」ができます。そしてフリーランスに至っては、こいつ使えねえなと思ったら最悪案件の途中でも「あ、もう結構です」ができます。
その不安定さが通常フリーランスが心を病む一番の原因になりがちなのですが、私にとっては救いでした。

だって、そんな「いつでも切れる」フリーランスに2回目、3回目と仕事をくれるのって、まぎれもなく私の仕事に価値を感じてくれているからじゃないですか。
「こいつ使えねえけど、雇っちゃったからには仕方ない、うまく付き合おう」とかいう状態、発生しようがないんです。
相手の方が間違いなく立場が上なんだから、お付き合いで仕事を振る義理もないんです。
同じお金つかってもっといい仕事してくれる人がいるならそっちに頼めばいいんです。
口では何とでも言えるけど、お金や時間は正直です。

正直、駆け出しフリーランスの頃はかなり安い金額で仕事をしてたので、「まあ、安いからだろうな…」と思ってたんですが、今はそれなりの金額を提示するようになって、それでも仕事をいただける&継続していただけることが素直な自信につながってます。

まとめ。自信のつけ方は人それぞれ

ここまで書いて、「インポスター症候群はフリーランス向きかも!」なんて記事タイトルまで付けましたが、正直「そうも言いきれないよな」って思ってます。

私にとってフリーランスが救いとなったのは、私が「周囲からの良い評価を疑う」タイプのインポスター症候群だったからです。
だから「私にわざわざお金を払ってくれたこと」が、口先で繕いきれない本当の評価として感じられて、自信につながったのです。

「周囲からの良い評価はそのまま受け止めた上で、自分が彼らを騙しているような感覚に陥る」タイプのインポスター症候群の人は、フリーランスとして仕事を受け続ける事が逆に重荷になりかねないと思います。
特にフリーランスって、社会保障の天引きが発生しないことや、雇用者責任が要らないことで、パッと見の報酬が会社員時代よりも高くなりがちです。それを逆にプレッシャーに感じてますます自分を追い詰める人もいるかもしれません。

結局人それぞれなんですよね。
人を傾向に分けてグルーピングする行為はすごく大事で、それによって対策やケア方法が生まれてラクになる人はたくさんいます。
でも、とらわれ過ぎずに、最終的には自分の「オーダーメイド自己分析」をする必要がある。

仮にこの記事にたどり着いて「これってまさに私のことだ!!」と思った方がいらしたとしても、全部鵜呑みにはしないでほしいです。絶対違う部分あります。だって違う人間だもの。

それでも、もしなにかのヒントを得る手伝いになったとしたら幸せです。
お互いハッピー仕事人生おくりましょうね。

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develop / 2021.05.09

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