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内容が古くなっている可能性もあるのでご注意ください。
デザインをやってると必ず出会う言葉に「とりあえず何案か出してよ」というのがあると思います。
デザイナーの悲喜こもごもが詰まっている言葉
初稿で2案出すのが暗黙の了解になっているようなケースも多く、とにかく同じコンテンツに対してデザイン案をいくつか出すのはデザイナーが避けて通れないタスクとなっています。
この文化については、デザイナー / ディレクターなどいろんな立場からいろんな意見が出ていて、なかには「複数案出しはわるい文化!」みたいな見解も結構見かけるんですが、今回はそこについての良し悪しの意見はおいといて。
「デザイナーは複数案出すものである」という前提のもとに、「いいデザインをたのしく作る」ための傾向と対策を考えていきたいと思います。
「良し悪しの意見」の部分は、まあ、機会があれば別の記事で
デザインの複数案出しはなんで大変なのか
まず最初に言っておくと私はデザインの複数案出しが非常に苦手です。
何が大変って、もう、思いつかないんです。それに尽きる。 初めのヒアリングの時点で、頭の中にはなんとなく「理想とするデザイン」が浮かび上がっていて、それ意外のデザインはどうしても無理やり捻り出した「間に合わせ」になってしまう。
まあ…つまりは私の実力不足なんですけど…
「おんなじようなテイストで、細部のあしらいがちょっと変わってるだけ」とか。 「キービジュアルのレイアウトをちょっと捏ねただけ」とか。 「A案に採用していたあしらいを少し移してきただけ」とか(そして結果両案とも中途半端なクオリティに…)。
これまでそんなB案を量産してきました。
でもそれって「複数案」というフローのメリットをぜんぜん出せてないじゃないですか。 「中途半端な2案になる」ケースなんて本末転倒もいいとこ。 私も苦しいし、クオリティにつながってないからクライアントの得にもなってない。lose-loseです。
理想の複数案ってどんなんだろう
「私がクライアントだったら」、こんな感じで初稿2案出てきたらうれしいです。
- なるべく違う方向性に振り切ったテイスト/レイアウトで
- ひとつは自分がはじめ脳内で想像していたもの(ある場合)に近いテイスト/レイアウトで
- それぞれに「○○を重視するなら」という明確なコンセプトがあり
- ↑ただし前提として、両方とも最初に定めたコンバージョンにはしっかり繋がるように
「前提として、両案ともコンバージョンをしっかり見据えている」というのは、単純で、当たり前で、でも意外とハマりがちな部分です。
なぜならここは「デザイン」ではなく、前段階の「ヒアリング → コンテンツ作成」で詰めておくものだからです。
デザイン段階でこのポイントに迷った場合、すでに道を誤りかけている非常に危険な状態
特に、マーケティングの知識がない職人タイプなクライアントの場合、コンバージョン部分の意識がすっぽ抜けてる場合が多い(より正確に言うと「ターゲット≠自分」という点を忘れているクライアントが多い)です。 このあたりの理解の齟齬をはじめのヒアリングでしっかりと詰め、同じゴールを見てスタートを切る必要があります。
このあたりには一家言あるので、折を見て別の記事で…
理想の複数案を出すための個人的テンプレいくつか
複数案を作るとき、個人的には「どんな風に複数出すか」という方向性を決めるのが最初にして最大の関門です。
なので、いくつかテンプレを作っておくことで、はじめの選択コストを減らしていく作戦に出ようと思います。
ヒアリング中に「あ、このパターンでいこう」と瞬時に決まれば、その後のヒアリング時間も効率的に要望吸い上げできるかな〜…と
①クライアントの要望に忠実なA案と、個人的見解に沿ったB案
クライアントがデザインについてかなり具体的に要望を持っていて、しかもそれが「ターゲット層を考えたら正直微妙」という印象だったときは一番簡単です。
例えば、病院の院長さんが「大人の男って感じの、黒くて重厚なデザイン」を要望してきたり、初心者向けダイバースクールさんが「専門知識の説明をゴリゴリに押したコンテンツ構成」を要望してきたりとか、そういうケース。
「まれによくある」
こういうのを頭ごなしに「ターゲットを考えたらそれはよくないデザインですよ」と否定するのは…まあ妥当だし、ほぼほぼ間違ってるケースはないんですが、なんだかちょっとつまらない。 自分としても、試してみたら新しい境地が拓けていいデザインが生まれるかもしれないのに、成長のチャンスを切り捨てることになってしまいます。
こういうときは、クライアントの要望を忠実に汲み上げたA案をまず作りつつ、「このホームページを見るのはこういう方々でしょうから、こういうデザインもいいと思いますよ」と、自分(と自分の想像するターゲット)の理想を込めたB案を制作するといい感じかと思います。
注意すべきなのは、要望に忠実な方のA案を「ほうらこんなにダメでしょう!」というのを伝えるために適当に作っちゃうケースです。それは絶対にダメです。
なぜなら、もしそれが採用されてしまった場合、自分がダメだとわかっているデザインを、丁寧に、仕上げて、納品することになるからです。それはめちゃくちゃ苦しいことだし、しかもコンバージョンにつながらなかったら目も当てられません。 あと、単純に思想として、クライアントへのリスペクトがない行為なのでダメです。そういう姿勢はその後も言動の節々に現れて、ついにはお互いの信頼関係を壊します。
きちんと要望を汲み上げて「仮にこっちが採用されても納得いく」ように作ります
②情報のレイアウトを大きく変えたA/B案
厄介なのは、①のようにクライアントの中にデザインイメージがしっかり固まっていつつ、しかもそれが「うん、まあ、確かにそういう感じがいいよね」とデザイナー的にも納得度の高い場合です。
こういう場合、テイストをがっつり変えたB案をつくるのは結構難しい。なぜなら自分でも(A案に比べたら)微妙だなと思うデザインを作らなくてはいけないからです。
こういう時は、デザインテイストはそのままに「コンテンツレイアウト」をがっつりと変えてみるのも一つの手かな、と思います。
例えば、キーとなるコンテンツを変えてみるとか、ブロックのジャンプ率を変えてみるとか。 ウェブだと難しいですけど、文章を縦組/横組で変えてみるとか。 (ただこの時、前提として定めたコンバージョンを逸脱しないかだけはしっかり注意が必要です)
まあ、そういう時に果たしてB案は必要なのだろうか…というそもそも論が持ち上がりそうになりますが、やはり状況が許す限りは作っていきたいなと個人的には思います。
たとえ捨てられ死んでしまうデザインでも、その屍は自分の成長の肥料になるので…
③新たなインスピレーションを求めて参考サイトを探る
時間的な余裕があるならぜひやりたいのがこのパターンです。 ヒアリング段階でどんなに「まあそういうデザインが妥当だろう」と思っていても、外部の刺激でいいアイデアが浮かぶことは往々にしてあります。
ただこのやり方、自分の成長にもなるしクオリティも上がりやすいんですが、どうしても実務では時間的制約で難しいこともあります。 なので、精神的健康のためにも「余裕があったらやる」くらいの気構えでいきたいところです。
参考サイトめぐりって、楽しくなっちゃうので意外と時間食うんですよね…。
なお、クライアント側に明確なデザインイメージがない場合は必然的にこのパターンになってくると思います。
一人で2テイスト出すのは無理…
まとめ
とりあえず3パターン出してみましたが、このあたりはPDCA回しながらどんどんアップデートしていきたいと思います。 クリエイティブな仕事とルーティン化って相容れない感じもしますが、パターン化できるところはどんどんしていくことで、本当に大事なことに思考が割けるようになると思うので。
というわけで、自分のためのまとめでしたが、誰かの役に立つなら幸いです。
それでは、お互いHAPPYウェブ制作体験を。
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