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ウェブ制作の現場で、ワイヤーやカンプ作成の段階ですでに原稿が揃っているケースというのはそんなに多くないです(むしろレアケース)。
むしろ、どこにどんな文章を入れるのか、そもそもどのページにどんな内容のコンテンツがあるのかすらクライアントの頭の中にはないよ、という状態から始まることが主。
そんな状態でワイヤーフレームやカンプを作成するときに活躍するのが「ダミーテキスト」です。
制作物が完成するころには消えてしまう儚い存在ですが、個人的にはかなり重要な役割をはたしていて、扱いに気を付けるべき存在だと思っています。
十人十色なダミーテキストの世界
webの現場に携わってそれなりに長いですが、このダミーテキスト、特に決まったお作法がないためいろんな人がいろんな書き方をしていて面白いです。
今まで見て来た中ではこんな人がいました。
あのイーハトーヴォのあれ
Macの書体確認画面に表示される例文を拝借したやつ。
あれいいですよね、私も好きです。なんだかナチュラルでさわやかなオシャレさがあります。
「なんとなくの良さ」は置いておいても、漢字・ひらがな・カタカナがほどよく混ざっているので、パッと見た際の絵面でデザインと喧嘩しにくく、違和感に邪魔されずにクリエイティブの確認が行えるいいダミーテキストだと思います。
ただ、PC関係に馴染みのないクライアントには「なんですかこの文章?」とガッツリ心にひっかかる可能性がある
ちなみに元ネタは宮沢賢治さんの「ポラーノの広場」という作品に登場する一説だそうです。著作権保護期間を過ぎている作品なので、青空文庫で全文読めます。
なお亜種に「山路を登りながらのあれ」(夏目漱石さんの「草枕」)があります。イラレ派の人はこっちの方が馴染みがあるかも。デフォルト設定だとテキストボックス配置時に自動挿入されるので。
テキストテキストテキストテキストテキ…
この記事書いたあと、プレビューで最終確認していて「あれ!? ダミーテキストそのまま残しちゃってる!」と間違えて一瞬焦りました。そのくらいこちらもダミーテキストとして馴染みのある文面です。
制作に慣れてないクライアントでも一目でダミーテキストだとわかるので、そういう点では誤解が生まれにくくていい感じです。
ちなみに、「テキスト。テキスト。テキストテキストテキストテキスト。テキスト。」のように、文がいくつか入るよ、というのを表したものや、「テキスト、テキスト。テキスト、テキスト。(テキスト+句読点で5文字)」「ダミーテキストです。(10文字。以降繰返し)」という感じで、文字数を数えやすくしたものなど、バリエーションも多様です。
上の「あのイーハトーヴォの…」の「漢字かなカナがほどよく混じって絵面として完成してる」という良さはこちらにはありませんが、個人的には違和感を感じるほどではないですね。
仮に「漢字だけ」にするとすっごいデザインの印象変わって、気になってデザイン確認どころではなくなります。気になる方はお試しあれ
〇〇〇〇×〇〇〇〇×〇〇〇〇×〇〇…
文字の数えやすさに重きを置いたパターンです。「○○○○×」の5文字をひたすら繰り返します。
数えやすいのはいいのですが、個人的には結構「目に引っかかり」ます。デザインカンプで使うと、ちょっとクリエイティブの確認に障る感じがしますね。
一方、ワイヤーフレーム段階では結構使い勝手いいと思います。どこにテキストブロックが入っているのかがパッとわかるので。「なんかこのページ文字がないな~情報足りてる?」とか「さすがにここに300字も書けないだろ! ブロック減らそ」みたいな検討がしやすくて良い感じ。
もうダミーとか言わずに最初から書いちゃう
以前の私がこれでした。
上3つのスタイルの弱点が「ここにはどんな内容が入るか分からない。周囲の状況から推理するしかない」という点なんですよね。
なので、いざ出来上がったあとに「あれ? ここって、商品の具体的な説明が入るんだと思ってた…」とか、「こういう文体? ここはお客様に語り掛ける感じにできない?」みたいなすれ違いが発覚したりもします。
また、絵面だけ考えて適当にテキストブロック配置してたら、いざ原稿書く時に「…あれ? ここ何書けばいいの?」となるのはわりとありがちなミスです。あとは「ここ45字くらいしか入らないじゃん! こんなに言いたいことあるのに!」とか「ここ一言で済むのに100字くらいある…」とか。
なのでテキストブロックを配置するときは、最低限「どういう内容でどのくらいの量のテキストが入るのか。キャッチコピーなのか、コンセプトメッセージなのか、説明文なのか」くらいは考えておく必要があります。
なまじライティングに慣れていると、「そんなん考えてる暇あったらもう書いちゃう」とか「先に情報を場に出してからそれをレイアウトするのも一興」となるわけです。
ただ、今はこのやり方はしてません。
自主(自社)制作だったり、クライアントも制作に慣れているとこのやり方もかなりいい感じなのですが、制作慣れしてないクライアント相手には辞めたほうがいいです。
なぜなら、とっつきやすい文章の部分に目が行ってしまい、細部に気をとられて肝心な要点の確認がおろそかになるから。
具体的に言うと、今はワイヤーフレームのレイアウトを見て欲しいのに「ここの文章こういうふうに直してもらえませんか?」となったり、デザインカンプでクリエイティブを確認してほしいのに「ここの句読点とってほしいです」となったりします。
「ちがうんです~! これはダミーです~! いまはここを確認してほしくて~!」と理屈で説明しても、気になっちゃうものはしょうがありません。「同じ画面を見て、注目するポイントを変えて」というのは慣れていないとめちゃくちゃ難しく、制作が本職でない方に無理強いしていいことではないです。
ダミーテキストに求めたいこと
言葉って人間が生んだすばらしい発明品で、絵や音に比べて圧倒的に齟齬なく情報を伝えることができます。そのため、人間は文字があると自然と意識が吸い寄せられるようにできてるわけです。
ただ、それゆえに無視するのが難しく、その時本当に確認したいこと/してほしいことそっちのけで目が行ってしまうことがある。
クライアントとのキャッチボールにおいて、ダミーテキストには「ここには文章が入るということがわかり、なおかつどんな内容であるかもわかり、ただし本題以上に主張しすぎない」という絶妙な立ち位置が要求されます。
個人的に思うダミーテキストの「要件」
- ダミーだということが「自然に」わかる
- クリエイティブ・レイアウトなど「その時メインで確認してほしいこと」を邪魔しない
- (デザインカンプでは特に)漢字かなカナのブレンド率からくる「ぱっと見の絵面」が完成品イメージと近い
- どんな内容をどのくらいの量書くのか、後の制作イメージがわきやすい
私が現在使っているダミーテキスト
ここまでの話を経て、私が主に使っている「現状決定版」のダミーテキストをご紹介します。
冒頭ちょっとだけ内容を考えて書いて、あとは「テキストテキストテキスト…」でかさましします。人間の脳って便利なもので、冒頭に一、二例文を入れてあげるだけで、あとの方は勝手に補完してくれるんですよね。
たとえ、冒頭書いてたら筆がのって、うっかりブロック全部書いちゃった! という時でも、クライアントにワイヤーやカンプを出す際は一度テキストファイルに避難させ、この形で出してます。すべては「ちゃんとその時の本題を確認してもらうため」です。
ただ「現状決定版」と言ったとおり、まだこれに腰を落ち着けようとは思ってません。
というのも、クライアントに原稿作成部分を頼むケースの際、どうしても量感を大幅に無視して入稿されることが多いんですよね…(事前に文字数を伝えていたとしても)。
こっちは文章量を想定してデザインを作っているので、「120字想定だったところへ600字入稿された…」みたいなことがあるとどうしてもビジュアルが崩れてしまいます。
ただ、「仕上がりの文字数を考えて原稿を書く」なんて行為、本職ライターくらいしかやらないので、無理強いできないのがつらいところ。
もしダミーテキストの見せ方でこの辺りのコミュニケーションが取れたらすばらしいな~、と、未だに模索しているところです。
たまに文字数どころかページ構成まで無視してくるクライアントもいて(しれっと段落増えてたりする)、そういう時はさすがに「お~~い(怒)」ってなります
まとめ
月並みな締め方ですが「たかがダミーテキスト、されどダミーテキスト」ということで。
制作時のコミュニケーションのとりやすさが劇的に変わるポテンシャルを秘めている存在なので、ぜひ自分の「秘伝のタレ」をもう少し煮詰めていきたいところです。
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